消去。削除。殺意。

振り返ってはいけない

昔の事は心の奥深くに仕舞って

二度と掘り起こさぬよう

堅く封印するのだ

思い出したくないものは都合よく記憶から消し去る

そう、都合よく

いつでも都合よく過ごしてきた俺には実に簡単な事だ

凄く簡単だ

しかし何かの拍子に封印が解かれてしまったら？

俺は気付かない振りをするだろう

気付いても認めないだろう

その過去が蘇ってきた事を

決して辛くなんてない

その事実を消し去る事は簡単だから

実際に今までも消し去ってきた

だから今までと同様

自分にとって都合の悪いものは都合よく消す

哀れで

惨めで

可哀想な

あの人たち

全て俺の記憶から姿を消していく

あの人たちには嫌われたっていい

むしろ嫌って欲しい

殺意が湧くほど嫌って欲しい

でも俺には愛する人がいる

愛してくれる人がいる

その人がいるから

俺は正気でいられる

いなくなったら・・・

自分さえも

自分の記憶から消し去るだろう